2007年の五山送り火は、晴天に恵まれ、早朝でも汗をかく真夏らしい日となりました。

京都の夏を締めくくる、五山の送り火 大文字、松ヶ崎妙法、船形万燈籠、左大文字、鳥居形松明。

夜空を焦がす壮大な精霊送りはたくさんの人の手によって守り継がれ、今も尚人々の心に生き続ける伝統行事です。その伝統を支える人々と、一日の様子をご紹介いたします。

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20:00点火
  6:00〜15:00 護摩木の受付

割り木(大文字山の松の薪)→400円  護摩木→300円
ご先祖の戒名・所願等を記入の上志納していただきます。銀閣寺門前に志納所を設置し、保存会員・ボランティアが交代で受付をしました。暑い中、沢山の人々が訪れていました。





 

  16:00 割り木・護摩木の運搬

火床近くの高さまで運ばれ、積み上げられた割木や護摩木を、ボーイスカウト・ボランティアなどが流れ作業で中心の金尾近くまで運びます。
その後「大」の字の流れに沿った階段に移動し、各火床まで再び薪のバケツリレーです。
各火床、割り木は5束、護摩木は1箱、消火用の水が入ったポリタンク1つを用意します。


 

  17:00
火床組み上げ

各火床に割り振られた割り木・護摩木を、保存会員が組み上げていきます。
組んだ割り木に麦わらや松葉を加え、火がおこりやすいようにします。 火がおこりやすいようにだけでなく、崩れにくく火が長持ちするように組み上げなければいけません。細心の注意を払いながらの作業です。


 

  18:30 防火作業

組み上げられた火床周辺の草木に、京都市消防局の方々にポンプで放水していただきます。万が一の飛び火を防ぐため、事前にこのような作業を行っているのです。


 

  19:00 読経

銀閣寺執事長の祈祷がささげられます。その
20分後には飾り付けられた大師堂にて浄土寺のご住職と共に、保存会員が読経を行います。
厳かな読経と共に緊張感が高まります。


 

  20:00 点火

大師堂の灯明が運び出されます。点火用の松明に火が灯されました。

「南の流れ、よいか――」「北の流れ、よいか――」「一文字、よいか――」

会長の呼びかけに応える、各火床からの大きな声。五山の先頭を切って、大文字が点火されました。


  
 
文・撮影:関野 遊子

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20:10点火
  6:00〜10:00 ・各家庭ごとに火床の準備
・妙法では護摩木の受け付けはしていない

妙法の保存会では各ご家庭ごとの作業になります。


 

各ご家庭ごとに3つほど火床を担当し、午前中には準備を終えます。
割木は保存会から配られ、1つの火床に2束で組み上げます。組んだ割木の間には松葉や新聞紙を入れていきます。 出来上がった火床にはビニールがかけられます。夕立などで濡れないようにするためです。

 



18:30〜19:30 組み上げられた火床周辺に、京都市消防局の方々にポンプで放水していただきます。万が一の飛び火を防ぐため、事前にこのような作業を行っているのです。

放水が終わる頃、保存会員の方々が妙法にのぼり、火床のビニールをとって点火に備えます。

 


  20:10 京都簡易保険事務センターの屋上から保存会長が送る合図に合わせて、妙と法一斉に点火されました。 約20分間、火をともしながら、ご先祖様の精霊を送ります。 *20時半頃に一斉に消火されます。

 


21:30〜22:20 送り火のあとは松ヶ崎の菩提寺である涌泉寺にて題目踊りとさし踊りがあります。

松ヶ崎立正会の方々による「南無妙法蓮華経」の題目を唱えながらのゆったりとした題目踊り。太鼓の音にあわせ、扇をもって踊ります。
題目踊りのあとは、盆踊りのひとつでもあるさし踊りが行われました。さし踊りは一般の方も参加し、送り火の夜に、踊りの輪が広がっていました。


 

文・撮影:松尾 佐保

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  20:00〜20:13 カンカンカンと合図が聞こえてくると、すでに点火されていた大文字を見守っていた皆さんも、船形万燈籠がよく見える「鉦打場」と呼ばれる点火の合図が行われる所へ一斉に移動します。


  20:15〜 いよいよ船形万燈籠点火時間、多くの人が集っていました。 点火が始まると「おおー」という大きな歓声とともに妙見山に船形が現れます。船形は30分間ほど力強く燃え続けました。

  21:00〜 船山の麓に位置する西方寺において、国の重要無形民俗文化財に指定されている「西方寺六斎念佛」が行われます。 送り火終了後21:00より、西方寺境内の中心にかがり火が灯されます。かがり火が灯されると、境内は人でいっぱいになるほど多くの方々が集いました。


 
  21:10〜
黒い装束で鉦をもった方(5名)と、白い装束で太鼓を持った方(9名)が、燃え上がるかがり火を中心に馬蹄形となり西方寺六斎念佛が始まります。 かがり火の音がパチパチと聞こえる静寂の中、鉦の音が響き念佛が唱えられ太鼓が打たれます。 「古典的六斎念佛」と呼ばれる西方寺六斎念佛は、笛や大きな動きはなく芸能的な要素がないもので、六斎念佛の古態を伝えるものです。 西方寺六斎念佛奉納後、自然と拍手が鳴り響きました。 船形万燈籠の地域のお盆行事は、「西方寺六斎念佛」で締めくくられました。


 

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文:撮影:濱田 康江

20:15点火
  7:00〜12:00 朝早くから、金閣寺の入り口前で、護摩木・松明・松割木の販売が行われました。
松割木と護摩木の二種類があります。1本300円です。

昔からある松割木が人気で減りが早く、例年10時頃にはほとんど売り切れます。松割木の数に限りがあるので、買えなかった人の為に護摩木の販売がされるようになりました。木には「家内安全・無病息災」と書かれ、書き終えたら回収し、トラックで山に順に運ばれていきます 。

昼休みは近くの法音寺にておこなわれます。法音寺は松明発祥の地と言われています。


 

14:00〜16:00 売り場での販売が終了し、片付けをしつつ、山での作業に本格的に取り組み始めます。

すべての木を山まで運び、均等に配分します。 配分された木を、まず大きさごとに分けていきます。大きい木を土台として使い、次に中・小と続き一番上には護摩木が組まれます。木を組むとき、木の皮を内側にすることで燃えやすくします。

曲がった木などは組まず、横に立てかけられます。
曲がっているものとまっすぐな木では火の燃え方が違うので、バランスを整えるために、横に立てかけるそうです。


  17:30〜 山での作業は4時過ぎまでには終わり、そこから各自の家に戻り、本番の準備をします。

5j時30分に法音寺に再集合しました。 そこでは行列のときに燃やす松明作りをします。軽く夕食を取り、近所の方々が集まってきた7時頃に大きな松明に火をつけます。 そこから行列が出発し、山を登り、大きな松明以外の火を消します。

他の山に火が燈るのを見ながら、自分たちの番を待ちます。


 

  20:10 大松明から、行列の時に持ってきた松明に再び火をつけ、いよいよ点火です。

消火をするときは、消防団の方にまかせ、松明で足元を照らしながら、法音寺に戻ります。

この時に使用された松明は、一年間お守りとしても使用されます。

 
 

文:撮影:小林 薫

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20:20点火
  8:15〜 割り木の準備

保存会会長から挨拶の後、作業に取りかかります。 『今年も美しい送り火にしましょう!』
 
まずは火種に使う木を山の上に運搬するための準備。 『笠』や『足』といったパーツごとに使われる木を束ねてまとめ、竹に荒縄で括りつけて天秤のようにして担ぎ上げます。 これだけでもかなりの重さがありますが、昔はさらに倍近い重量を一人で担いだそうです。


 

  9:00〜 古い町並みが美しい鳥居本の坂道をどんどん上っていくと、化野念仏寺さん野駐車場に護摩木の志納所が設置されています。
16日当日は朝9時から護摩木の受付が始まります。 志納の受付開始すぐは、数人だった志納者も開始30分ほどで、テントの中はいっぱいになってきました。御年配の方から小さな子供まで老若男女、皆さんそれぞれの思いを鳥居形の印が押された護摩木に込めています。

護摩木のほかにこちらの志納所では、テレフォンカードや絵葉書・扇子・ガイドブックなど五山送り火グッズも置いています。テレフォンカードは当日にはもう売り切れていました。 護摩木は15時まで受け付けています。
受付終了後、護摩木は鳥居本集会所に運ばれ、読経でお清めされます。


 

護摩木の受付が始まる一方、山上では親火の火床までの運搬作業。
かなり急な斜面で足場も不安定ですが、夜にはこの斜面を松明を掲げ駆け降ります。あらかじめ火床に資材をおかず、点火の際は親火床から火をつけた松明を鉄製の受け皿まで走って設置する、という方法はこの山独特のもの。



  15:45〜 化野念仏寺ご住職による読経。保存会の方々が一人一人お焼香します。
『暑さや怪我には気をつけて、ご先祖様に安心して帰っていただきましょう。』




  17:00〜 親火となる火床の準備作業です。受付した護摩木を倒れないよう慎重に組上げていきます。 割り木の方は荒縄で括っただけでは点火後にほどけてしまうので、針金でさらに固定します。

準備のできた親火床から順番に点火していきます。 皆さんの願いの書かれた護摩木が焼け残らないよう、また火の勢いが上がり過ぎて他に燃え移らないよう、注意を払いながらの作業です。

 

  18:30 放水作業。回りに生えている木や草をしっかり濡らします。消防の皆さんはこの後も常に火の側に控えています。松明が点火されると火の粉や灰がたくさん飛びますが、すぐに消防隊員の方が消し止めます。



  20:00 曼陀羅山から臨む京都市内。次第に暗くなってくると、桂川や広沢池で行われる灯籠流しの様子が見えます。また点火の時間が近付くと京都タワーやグラウンドのライトなどが消え、8時に大文字に火がつくといよいよという緊張感が高まります。

  20:20 点火一分前、会長さんより一度だけ太鼓の合図があります。

いよいよ点火時間、太鼓の連打を合図に火のついた松明を持っていっせいに火床に走ります。 こうして五山送り火の最後を飾る鳥居に火が灯されました。

 

文・撮影:澤 鮎美

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2007年8月16日、街の灯りが消される中、京都のみならず全国の皆様に注目され灯った五山の火。この炎は沢山の人々に支えられています。

伝統の火は消えることなく、来年も京都の山に灯されることでしょう。